「空いてる席に適当に座れ」 「は、はい!」 恐らく自分専用であろう、他とは違う椅子に座っている跡部は、にそれだけ指示すると、再び椅子の背にもたれてふてぶてしく部室内を見渡した。 「ちゃんは俺の隣ねー!こっちこっちー!」 「あ、はい。ありがとうございます」 満面の笑みで自分の座っている椅子の隣の椅子を叩きながらジローが急かす。はそれに応えるように微笑んで頷くとジローの隣に小さく腰掛けた。 「オイ、立海大の運営委員!」 「は、はい!」 「テメエなんでそんな所に座ってやがんだ」 「…え?」 「普通委員長である俺様の隣だろうが」 跡部が額に青筋を浮かべながら静かに、しかし荒々しく言葉を継げる。あまりにも急な出来事に跡部の方を向いたまま固まっているの横でジローは陽菜の座っている椅子の背もたれを力強く握り、の右隣にいつのまにか座った忍足が跡部の方を見て小さく笑っていた。 「男の嫉妬は見苦しいで、跡部」 「跡部かっこわる〜、それに適当に座れって言ったのは跡部だC〜」 「うるせえ!大体運営委員は委員長の隣が常識だろうが!」 「跡部…激ダサだな」 ボソッと呟いた宍戸の方を跡部は思いっきり睨みつける。睨まれた宍戸の方は溜息を吐きながら視線を交わさないように跡部とは反対の方向を見た。 「あ、あの。私が動きます」 「いいのいいの〜、ちゃんは座っといて。跡部がわがまま言ってるだけだC〜」 「お嬢ちゃんは座っといたらええねん」 「…勝手にしやがれ!」 ついに怒りMAXになった跡部は自分の前にあるテーブルを足で蹴り上げると大きく舌打ちをしてジローと忍足の方を睨んだ。ひとつ大きな溜息をついたあと、喋り始めようと息を吸い込んだ瞬間に「はいはーい!」というジローの声が入り、また顔をしかめた。 「今度は何だジロー」 「そういえばさっき自己紹介しそこねたなーって思って!」 「そうですね、折角皆集まってるんだし自己紹介しましょうか」 今にもに飛びつきそうなほどはしゃいでいるジローを、隣に座っている鳳がなだめながらも賛同する。跡部が「するならさっさとしろ」と言うのを合図にの周りを数人が囲んだ。 「俺ね〜、氷帝学園3年芥川慈郎〜!よろしくねちゃん〜」 「芥川さんですね、こちらこそよろしくお願いします」 「俺は向日岳人!氷帝3年だぜ」 「向日さん、ですね。よろしくお願いします」 「俺は3年の忍足侑士や。こんなかわええお嬢さん、立海に置いとくのはもったいないわ」 「あはは…。忍足さんって面白いですね」 「忍足激ダサ。俺は宍戸亮、3年だ。よろしくな」 「はい、よろしくお願いしますね宍戸さん」 「俺はさっき言ったからいいかな。よろしくね上原さん」 「うん、こちらこそよろしく鳳君」 「……2年の日吉だ」 「よろしくね日吉君」 皆に押されるようにしてしためんどくさそうな日吉の自己紹介が終わった後、は一度皆の顔を見回してから一呼吸おいて微笑んだ。 「立海大附属中学校2年のです。よろしくお願いします」 ジローや岳人が騒いでるとき、の目線は一人の人物を捕らえていた。 「あの、跡部委員長…」 「あ?俺様の自己紹介はもういいだろう」 「あ、そうじゃなくって…。あそこにいる方は…」 「ああ……オイ樺地」 「ウス、2年の樺地……です」 「樺地くんだね、よろしく!」 がにっこりと微笑んで樺地に言うと跡部が「主題に入るぞ」とに言った。は慌てて跡部の方を向いて謝ると、ジローが叩いてる椅子の方に苦笑いをしながら小走りで向かった。 「知ってると思うが、今日は合同学園祭についての話し合いだ」 それについて早く知りたいは若干体を乗り出して跡部の次の言葉を待った。跡部と目が合って慌てて目線をそらそうとすると左隣から何かが急に伸びてきておもわず小さく悲鳴を上げる。 「ちゃんあげる!俺のお菓子〜」 「ジロー…テメエちょっと黙っとけ!」 跡部が鬼のような形相でこっちを睨みつけてきて、口の中にポッキーを入れられたは恐怖で喉に詰まらせてしまった。げほげほと咽ていると忍足が背中をさすり「大丈夫か?」と聞いてきたのでなんとか頭を上下にふるので精一杯だった。その隣ではジローと跡部が口論をしていて、ようやく落ち着いたは苦笑いをしながらも楽しそうにその様子を見つめていた。 |