ありえない。え、何ですかこの疎外感。周りの友達がどんどん彼氏を作っていってるっていうのに私だけ彼氏ができない……。何で?どうして生まれてこの方彼氏ができないのー?!


ヒャハハ!、お前口から魂抜けてっぞ うへい、まじすか。おっす倉持。 ん、おっす え、待ってーちゃーん。華麗に俺はスルーですかー ああ、御幸。おっす わー、ついでー


御幸が何かぐだぐだいってるけど無視!だってもう私は今それどころじゃないんだから……!だって17年間よ?17年間彼氏ができたことないって相当じゃないの…?!そりゃあね、御幸も倉持もモテモテだから私なんかの気持ちは分からないと思いますよ!そんなの百…いーや、千も承知です!


もー……どうして皆この私の美貌に気づかないのかしら? ヒャハハハハハッ!げえっほげほっ!!え、お前それ本気?まさかとは思うけど本気?! っだー!もう!倉持うっざい! 俺はもうとっくにちゃんの美貌に気づいてるよ! さんきゅー、で倉持!あんた人並みにもてるんだからなんか秘訣とか教えなさいよ! え、え、やっぱりひどいよね?ねえ?! そーだな、秘訣かー…… 倉持も?!


とかなんとか意味の分からないやり取りを数回繰り返した後倉持は隣のクラスの奴に呼び出されてさっさと教室から出て行った。あ、倉持のやろう結局秘訣教えてくれてないじゃん。


倉持行っちゃったー… 俺じゃ不満ですかー? うん、かなり げっ!俺傷ついたよ…… あははっ!ごーめん、御幸からかうと面白くてつい…


えへ、と笑って御幸を見ると少し呆れたように笑っていた。え、何その顔反則!なんか思わず恥ずかしくなって今日暑いねー!とかいいながら顔を右手でパタパタ仰いだ。いや、本当になんで今言う?って言うお天気の話題を吹っ掛けた後に失敗した、と思った。けど、私の予想とは反対に御幸は明るい満面の笑みで確かに!今日の部活もあつそー!といって、私と同じように右手で顔を仰いだ。今日はそんなに暑くないけど、私の会話にあわせてくれたのかな、とか思うとなんか嬉しくなってにやけそうになった。(きもい、きもいぞ自分!)顔を見られたらやばいと思ったとき、右隣に座ってる男子が御幸に喋りかけた。内心ほっとしながらも、御幸が右側を向いている間にじっくりと御幸の横顔を堪能しといた(何か恋する乙女みたいだけど断じてそんなのではない、……と思う)うわー、やっぱり御幸って顔きれいだよなあ、何で彼女作らないんだろ?会話が終わったらしく、ごめんごめん、と軽く謝って私のほうに向きなおした。


ねえ御幸、そんなにもてるのに何で誰とも付き合わないの? んー?俺に釣り合う女の子が居ないから!何つって なんじゃそりゃ、もう!真面目に答えてよー 俺はいつでも真面目ですよ。んでちゃんは? ……私も釣り合う男が居ないからよ! そんな見栄はらなくてもー はってないっ!あーもうっ!どっかにいい男落ちてないかなー… 落ちてるじゃん は?どこに…、 こ、こ!


……って御幸かい。にっこりと笑って自分の事を指差して呟く。私は呆れたように笑いながらはいはい、とあしらった。ってか何がつりあってる、よ!御幸とあたしじゃまるで月とすっぽんじゃない!(自分が月じゃないないなんて悲しすぎる!)こんなかっこいい男の隣に居たら自分が廃れてしまいそうで、……怖いわ!


ちゃーん なに?まだなんか…っ


いきなり腕を掴まれて唇に温くて、やわらかい感触がした。私はいきなりで吃驚して、それが何なのか理解するのに結構な時間がかかった。あ、もしかして(しなくても)キスされてる?!思えばここは教室な訳で、皆の視線は私たちに釘付けなわけで。目の前には御幸な、わけで。私はもう何もできなくて、ただ、御幸に体を預けた。


「ね、落ちてたでしょ」
ニヤリと笑った御幸の顔が、声が、すごくかっこよくって、ああもうあたしすっぽんでよかったとかおもって、何か頭ぐるぐるしてきて。縦に首を振るまで後数秒。


案外近くに落ちていた


(ヒャハハッ!お前等すげー注目浴びてる!)(ふ、普通教室でするー??!!)