「チョコミントひとつ〜」
「オレはイチゴとチョコのダブルで」
「毎度〜」

時期を考えればいささか暑い日の午後、アイスクリーム屋に並ぶ一組の男女。

「え!?銀時ズルイ!!何で自分だけダブル!!?」
「な〜にいっちゃってんのよチャン、今日は銀さんのオゴリだぜ?ちょっとくらい贅沢したって許されんだろ」
「一般的には許されないから。彼氏が彼女差し置いてダブルアイスなんて」
「一般とかそういう枠に納まりたくないんだよね、オレ」
「ソレ全然カッコよくないからね?」

どこかあさってのほうを向いてあごの下に手なんて添えてる彼氏に思わずため息ひとつ。
そりゃ、銀時が甘いものが大好きなのは知ってる。(大好きすぎて困ることが多いけど。)
でもだからってさ、普通彼女よりも大きなアイス食べようとする?!
いくらオゴリでもありえないでしょ?

「いいんです〜だって糖分ないと生きてえねぇもん。銀さん」

嗚呼、何だって私はこんな死んだ魚のような目の糖尿予備軍なんか好きになっちゃったんだろ・・・
人生最大のミステリー。

「・・・い。おーい、ちゃーん?」
「ふぇっ!?」

銀時の声で我に返ると、目の前に差し出されたチョコミントアイス。
私の思考がトリップしていた間に銀時が受け取ってくれたらしい。

「あ、ありがと」

大好きなチョコミントアイスに思わず頬が緩む。

「つーか、ってソレ好きだよな〜」

ダブルアイスの上側に配置されたチョコ部分を舐めながら銀時は私の愛しいチョコミントを見つめてくる。

「チョコミント?・・・あげないよ」

チョコミントを持ったまま銀時から一歩離れてみる。

「いやいや、いらねーし。だってそれあんま甘くねーじゃん」
「甘くねーアイスとか存在する意味なくね?」とか言いながら、ちょっぴり離れてた距離を埋めてくる銀時。
「何いってんのさ!?このスーッとする感じがたまんないんジャン!!」

私はアイスといえばいつもチョコミントだ。ほかのなんてほとんど食べない。
だってチョコミントがおいしすぎるから。
一方の銀時はその日の気分によっていろいろ。でも抹茶とかチョコミントみたいなのより、甘〜いカンジのヤツばっか。

「そういうもんかね〜」

そう呟いたきり何も言わなくなった銀時。
てか、もうチョコの部分食べ終わってるよこの人。どんだけ速いんだ。
速く食べなきゃ溶けちゃう・・・。
私もチョコミントを食べるのに集中し始めた。
スッとさわやかなミントアイスにところどころ隠れる甘いチョコチップ。
草原の中で宝物を見つけたような、そんな気分になれる味。

「オイ。

と、そのとき、銀時が私を呼んだ。

「え?どしたの、銀と・・・」

唇に触れた、柔らかな感触。
そしてその後口内に広がるあまいあまいチョコとイチゴのフレーバー。

「ん・・・っちょ、銀時、いきなりなにす・・・」
「あ〜、うん。ちょっと甘いな、コレなら」
「へ?」

恋人同士とはいえ、いきなり路上のど真ん中で乙女の唇を奪った目の前の男は、一人でなんか納得したようにうなずいている。

「いや、チョコミントってあんま甘くね〜けど、こうすればちゃんと甘いんだなって」

もう一度落とされた口付けも、やっぱりすごく甘かった。






チョコミントアイスの誘惑




(要するに、お前がいれば何だって甘いってことよ)(姫騎士様より頂きました!)