(まさむねさま、まさむねさま、あなたがすきすぎてどうしようもないんです)


一つもかけていない綺麗な満月の夜。時計の針が動く小さな音と私のすすり泣く声だけが部屋に響いていた。政宗様がどんな顔をしているか私にはわかりません。けど、きっと(そして、たぶん)政宗様はお困りになっているのでしょうね。私は政宗様が大好きすぎてもしかしたら困らせることが私にとっての愛情表現なのかもしれません。それが政宗様にとって迷惑だったとしても、私はきっとそういう形でしか政宗様に自分の思いを伝えることができないのです。もうどれだけ時間がたったでしょう。政宗様がお忙しいのは十分の承知です。でも、でも政宗様に此処を去ってほしくないのです。だから、私は政宗様の裾をつかんで(政宗様を困らせて、)それでも、政宗様に此処を去ってほしくないのです。

「政宗、様……。」
…。」
「いや、です…!政宗様!!」
「落ち着け!俺なら大丈夫だぜ?。」
「政宗様…。」
「大丈夫、俺はちゃんと戻ってくる。」

嘘つき。知ってるんですよ、私。政宗様がうそをつくときに鼻を掻く癖。以前熱が出たときも、敵に闇討ちされかけたときも、私がえっちな本を見つけたときの言い訳も、(そして、今も)嘘をつくときは鼻を掻いていたんです。今日はhotだからちょっと熱いだけとか、ちょっと戻ってくるときにこけたからとか、これは俺のじゃなくて小十郎のだ、とか(必ず戻ってくる、とか)嘘ばっかり。政宗様の嘘、私わかるんです。何年政宗様が好きだと思ってるんですか?政宗様のことなら何でも知っています。好きな人のことなら、知っています。

「必ず…必ず戻ってくると誓ってくれますか?」
「okey.誓うぜ。約束だ。」
「政宗様…お優しいですね。」
「え?」

私がポツリと言った言葉は政宗様には届いてなくて、ほっとした反面少し胸が痛くなった。優しいです。でもその優しさが時には残酷だって、知ってました?知らないでしょうね、そしてあなたはまた私に優しくするんです。それが、私にとって残酷な嘘でも。私に優しい嘘をつき続けるんです。私は聞き返した政宗様に向かって少し遠慮がちに首を横に振った。此処までですね。政宗様の出発時間をとても伸ばしてしまいました。最後になるかもしれないから。本当はそんなこと考えたくないけど、小十郎さんが最悪の場合を考えなさいって、いうから…。考えたくないけど、考えちゃうんです。政宗様が居なくなったら私も居ないものと同然です。だから、どうか政宗様。私とした約束が残酷な嘘とならないように、約束通り帰ってきてください。政宗様の好きなお食事を用意しています。だから、お怪我をせずに健康な体で戻ってきて下さい。私のわがまま聞いてください。

「政宗様…ッ!」
「何だ…?」
「私、政宗様のことが、」
「おっと、sorry.そこから先は俺に言わしてくれねーか?」
「政宗様…。」

政宗様は私の唇にスラリと長い指を一本立てて当ててきた。私が泣きそうな顔をしたらおいおい、また泣くのか?ってくしゃっとしたあどけない笑顔で笑いかけてきた。政宗様は一回咳払いをして私の右手を両手で包み込んだ。そして静かに目を瞑って口角を少し上げた。私がしゃくりあげそうになるのを我慢していると政宗様は静かに、目を開けた。

「I love you.」

言葉が浮かんでこなかった。ただ大粒の涙がこぼれるだけでしゃくりあげることしかできず、ただこくこくと頷いた。何度も何度も頷いていると政宗様が抱きしめてきた。私はただ政宗様の背中を力の限り抱きしめた。すると政宗様も力を強めてくれたので涙がもっと溢れた。ごめんなさい、政宗様。私、信じています。それがどんなに無謀な約束だったとしても、残酷な優しい嘘だったとしても、私、政宗様のことを信じています。政宗様が、好きだから。

(mee too.わたしはあなたがすきすぎるんです。)


無謀な約束、残酷な嘘


(お帰りなさい、政宗様。)